一つの土地を分けて売却する場合の宅建業法上の解釈
【不動産売却相談百科Q&A】の中の質問で多いのが、「土地を分筆して売却すると宅建業法違反になるのか?」という質問です。
その質問の背景として、広い土地は一般個人が買い取ることが難しいため、分筆して売却したいができないというものです。
宅建業者から宅建業法上、一般個人は広い土地を分けて売ることができないと言われているのでしょう。
しかし、宅地建物取引業に該当する取引かどうかは個別の判断になります。不動産売却における要件を、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に照らし合わせて、事業性が高いかどうかを判断します。
よって、宅地建物取引業であるかどうかの判断基準は、以下の通りです。
目次
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① 取引の対象者
② 取引の目的
③ 取引対象物件の取得経緯
④ 取引の態様
⑤ 取引の反復継続性
① 取引の対象者
広く一般のものを対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
② 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
③ 取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続又は自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
④ 取引の態様
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続又は自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
⑤ 取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
参考:国土交通省ホームページ(宅地建物取引業法 法令改正・解釈について)
上記の要件の中でも「取引の反復継続性」は、客観的に判断することが可能ですので、特に注意しなくてはならないポイントです。
【反復継続とは】
例えば、一つの土地を二つに分筆して売却した場合、「反復継続」して売却したことになるのか?という問題があります。
行政庁の解釈として「ごく薄い灰色」だと思います。
では、一つの土地を造成して道路や水道管等を埋設して4区画に売却した場合は、「濃い灰色」との認識を持たれると思います。
さらに、サラリーマンが100坪の実家を2区画に分けて売却した場合は、事業性は低いといえます。
例えば、それを両脇の隣接所有者に分けて売却した場合は、不特定多数への販売に当たらず、特定の2人の隣接者への売却となります。さらに事業という概念には当たらないと解釈されると思います。
① 広い土地を分筆して売却する場合
地主に相続が発生し、相続税を納付するため土地300坪を売却する場合を想定してみましょう。
その地主が宅建業者に売却すると買取価格が安いため、自分で造成して道路を通して4区画で売地看板を建てたとします。
近所の方が直接買ったり、不動産業者が買主を連れてきて、すぐに完売した場合を考えてみましょう。
相続税の納付目的であれば、特定の資金需要の充足であるため、事業性は低いといえます。
しかし、造成して道路を通した部分は事業性を感じます。
また、売地看板を建てたのも不特定多数への販売と解釈もできます。そういった面で、事業性については「灰色」だと思います。
しかし、砂利道路で4区画に区切った程度で、不動産業者に販売を委託すれば、「相続税納付のための売却」で事業性は「薄い灰色」に薄まると思われます。
② 数回の取引を行っている場合
サラリーマン大家さんを取り上げてみましょう。
ある程度の規模感で投資しているサラリーマン投資家の場合、所有不動産の入替えや買換え目的で、所有物件を売ったり買ったりするケースがあります。
短期間で売り買いを繰り返すと、「反復継続」に該当しますし、そこに利益を載せると「事業性」も色濃くなります。
しかし、「資金収支が赤字のため借入金を圧縮する目的」であれば、特定の資金需要を充足する目的に該当すると思われます。
その売却が2棟~3棟と継続して売却に出した場合も、目的が借入金の圧縮で本業がサラリーマンであれば、事業性は高くないとの解釈がなされると思います。
③ 事業目的で複数回取引を行う場合
上記2のケースで、地主が自分の広い土地を相続税納付後も、継続して造成・売却を繰り返した場合も、事業性が高いと解釈されます。
上記3のケースで、サラリーマン大家さんが売り買いを繰り返し、売買益を積み上げていくような場合も当然に事業が高いと解釈されます。
~まとめ~
「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に「反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。」とあるように、相続した実家や住まなくなった空き家を売却する場合は、1回限りの売却になりますので事業性が低いとの解釈になります。
しかし、不特定多数の対象者へ不動産を売却する場合は、その内容や相手先により事業性の判断が「灰色の濃淡」に影響することになります。