ハザードマップの見方
「この物件、ハザードマップで色が塗られているけど大丈夫…?」
「色の意味がよくわからなくて、どう判断すればいいのか不安…」
一生に一度かもしれない、大切なお住まい探し。
ようやく理想の物件に出会えたのに、ハザードマップを見て急に心配になってしまった方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたの不安を解消するために、不動産のプロがハザードマップの正しい見方と、リスクとの上手な付き合い方をわかりやすく解説します。この記事を読めば、色が付いているからと諦めるのではなく、ご自身の目でしっかりと安全性を判断し、心から納得できる住まいを選ぶための知識が身につきます。
心が揺れるような気持ち、ありますよね。でも大丈夫、安心して過ごせる明日へ、ゆっくりと歩みを進めてみませんか?
そもそもハザードマップとは?基本をサクッと解説
まずは、ハザードマップの基本について簡単におさらいしましょう。
言葉は聞いたことがあっても、その役割を正しく理解することが、不安解消への第一歩です。
災害リスクと避難場所を地図で「見える化」したもの
ハザードマップとは、特定の自然災害が発生した場合に、被害が想定される範囲やその程度、そして安全な避難場所などを地図上に示したものです。国や自治体が過去のデータやシミュレーションに基づいて作成しており、いわば「災害の予測地図」と言えます。
「防災マップ」と混同されがちですが、防災マップが避難場所や防災施設を中心に示すのに対し、ハザードマップは災害そのもののリスク範囲を「見える化」している点に特徴があります。
事前にリスクを知ることで、私たちは適切な備えをすることができるのです。
どこで見る?国交省「ハザードマップポータルサイト」の使い方
ハザードマップは、お住まいの市区町村の役所やホームページでも確認できます。
しかし、全国の情報をまとめて手軽に確認するなら、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」が最も便利です。
このサイトには、複数の災害リスクを地図上で重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、各市町村が作成したハザードマップを簡単に探せる「わがまちハザードマップ」の2種類があります。
まずはご自身が検討している物件の住所を検索し、どのようなリスクがあるのかを大まかに把握してみましょう。
「重ねるハザードマップ」の使い方
1. サイトにアクセスし、地図画面または検索窓から住所を入力します。
2. 画面に表示される選択肢から、洪水、土砂災害、津波などの災害種別を選びます。
3. 指定した場所の災害リスクが、地図上に色付きで表示されます。
「わがまちハザードマップ」の使い方
1. サイトにアクセスし、都道府県と市区町村を選択します。
2. 該当する市区町村が作成したハザードマップの一覧が表示されます。
3. PDFなどで、より詳細な情報を確認できます。
【災害別】ここだけは押さえたい!色の意味とチェックポイント
ハザードマップを見て、多くの方が最初に戸惑うのが「色の意味」です。
ここでは代表的な災害ごとに、色分けが何を示しているのか、そして最低限どこをチェックすべきかを解説します。
洪水・内水氾濫:浸水の深さ(色の意味)と浸水継続時間
洪水ハザードマップでは、色の違いによって「想定される浸水の深さ(浸水深)」が示されています。
例えば、多くのマップでは以下のように色分けされています。
黄色:0.5m未満(大人の膝までつかる程度。床下浸水の可能性)
橙色:0.5m 〜 3.0m未満(1階の天井までつかる可能性。床上浸水のリスク大)
赤色:3.0m以上(2階建て家屋が浸水する可能性も)
マンションであれば2階以上を選ぶ、戸建てであれば基礎を高くするといった対策の目安になります。
また、浸水の深さと合わせて「浸水継続時間」も確認しましょう。
水が引くまでにどれくらいの時間がかかるかを知ることで、避難生活の計画にも役立ちます。
土砂災害:土砂災害(特別)警戒区域かどうか
土砂災害ハザードマップで特に注意すべきなのは、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」と「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」です。
これらの区域は、がけ崩れや土石流などが発生した場合に、住民の生命や身体に危害が生じるおそれがあるとされています。
特に「レッドゾーン」に指定された区域では、住宅の建築に構造上の規制がかかるなど、不動産の利用に大きな制限が伴います。検討している物件が、これらの区域に入っていないか必ず確認しましょう。
津波・高潮:浸水想定区域と避難の必要性
沿岸部の物件を検討する際は、津波や高潮のハザードマップが重要になります。
マップでは、最大クラスの津波や高潮が発生した場合に浸水が想定される区域と、その際の浸水深が示されています。
万が一の際にどこへ避難すればよいのか、安全な高台や津波避難ビルなどの「避難場所」と、そこへ至る「避難経路」が確保されているかを地図上で確認することが何よりも大切です。浸水想定区域内であっても、迅速に避難できる環境が整っていれば、リスクを大きく軽減できます。
「色が付いている=NG」ではない!リスクの正しい捉え方で不安を解消
ハザードマップで自分の検討物件に色が付いていると、それだけで「この物件は危ない」「買ってはいけない」と考えてしまうかもしれません。しかし、それは少し早計です。
大切なのは、リスクを客観的に、そして建設的に捉え直すことです。
大切なのはリスクの「有無」より「対策」を知ること
日本の国土は、その地理的な特性から、どこに住んでいても何らかの自然災害リスクをゼロにすることは困難です。
リスクがまったくない完璧な場所を探すよりも、はるかに重要なことがあります。
それは、「その土地にどのようなリスクがあり、それに対して地域や行政がどのような対策を講じているか」を知ることです。
そして、「自分自身でどのような備えができるか」を考えることです。
リスクの有無だけで判断するのではなく、対策によって安全性を高められるかどうかという視点を持つことが、後悔しない住まい選びの鍵となります。
対策で安全な街に!リスクを克服した事例(江東区・鎌倉市)
実際に、ハザードマップ上のリスクを乗り越え、安全で魅力的な街づくりに成功している地域は少なくありません。
例えば東京都江東区は、多くのエリアがゼロメートル地帯であり、水害リスクが高いことで知られています。しかし、区はスーパー堤防の整備や排水機場(ポンプ場)の能力増強といったハード対策を徹底的に進めています。こうした取り組みにより、区内のマンションは安全性をアピールでき、水辺の眺望といった魅力を求める人々から選ばれています。
また、神奈川県鎌倉市は津波のリスクが懸念される地域です。
市では津波避難タワーの建設や詳細な避難経路の設定、住民参加の防災訓練などを積極的に行っています。
地域全体で防災意識を高め、対策を講じることで、リスクを管理しながら豊かな海辺の暮らしを実現している良い例と言えるでしょう。
リスクと上手に付き合うための住まい選びと暮らしの工夫
リスクを正しく理解したら、次は具体的な行動です。
物件選びの段階から入居後の暮らしに至るまで、リスクと上手に付き合い、安心して生活するためのポイントをご紹介します。
物件選びでできる対策(建物の構造、2階以上など)
災害リスクを軽減するためには、土地の状況だけでなく、建物の特徴にも注目することが有効です。
以下のような視点で物件をチェックしてみましょう。
浸水リスクに対して
oマンションの場合は、浸水想定深よりも上の階(一般的に2階以上)を選ぶ。
o戸建ての場合は、土地を周囲より高く「かさ上げ」しているか、基礎が高く設計されているかを確認する。
地震リスクに対して
o1981年 6月以降に建築確認を受けた「新耐震基準」を満たしているか確認する。
oより高い安全性を求めるなら、「耐震等級」や「免震・制震構造」の建物を選ぶ。
土砂災害リスクに対して
o 頑丈な「擁壁(ようへき)」が設置されているか、その状態は良好かを確認する。
防災をおしゃれに!デザイン性の高い防災対策で暮らしを豊かに
「防災」と聞くと、どこか無機質で堅苦しいイメージがあるかもしれません。
しかし最近では、暮らしを彩りながら、いざという時にも役立つデザイン性の高い防災アイテムが増えています。
例えば、無骨なイメージだった浸水対策の「止水板」も、今では住宅の外観に調和する木目調やおしゃれなカラーのものが登場しています。
また、インテリアとして飾っておける美しいパッケージの非常食や、普段使いのバッグとしても遜色のないデザインの防災リュックなども人気です。
防災を特別なことと捉えず、日々の暮らしの中に楽しく取り入れることで、自然と安全意識を高めることができます。
災害リスクは資産価値にどう影響する?保険での備え方も解説
「ハザードマップで色が付いていると、資産価値が下がってしまうのでは?」という心配もよく聞かれます。
確かに、災害リスクは資産価値に影響を与える要因の一つです。
しかし、先述の通り、適切な防災対策が講じられている地域や、利便性など他の魅力が非常に高い物件であれば、資産価値が大きく下落するとは限りません 。
むしろ重要なのは、万が一の際の経済的な損失に備えることです。
そのための最も有効な手段が、火災保険や地震保険です。
洪水や土砂災害による損害は、火災保険の「水災補償」を付けることでカバーできます。
保険でしっかりと備えておくことが、経済的な安心感につながり、結果的に資産を守ることになるのです。
2020年から義務化!不動産会社が行う水害ハザードマップ説明とは
不動産取引の透明性を高め、購入者が安心して契約できるようにするため、2020年 8月から宅地建物取引業法が改正されました。
この改正により、不動産会社は売買や賃貸の重要事項説明の際に、対象物件が水害ハザードマップ上のどこに位置するかを説明することが義務付けられています。
具体的には、洪水、内水、高潮の3種類のハザードマップを提示し、物件のおおよその位置を示す必要があります。
契約前にプロから直接説明を受けられるので、疑問点があればその場で質問し、しっかりとリスクを理解した上で判断することができます。
不安なまま決めないで!地域に詳しいイエステーションに相談しよう
ここまで様々な情報をお伝えしてきましたが、「やはり自分一人で判断するのは難しい」と感じるかもしれません。
そんなときこそ、信頼できる不動産のプロに相談することが大切です。
ハザードマップの情報と現地の状況を照らし合わせ、あなたに最適なアドバイスをくれるパートナーを見つけましょう。
専門家の客観的な視点で納得のいく物件選びを
私たちイエステーションは、全国に広がる地域密着型の不動産ネットワークです。
各店舗のスタッフは、単に物件情報を紹介するだけでなく、その街の歴史や地形、過去の災害事例といった、データだけではわからない情報にも精通しています。
ハザードマップに示されたリスクはもちろんのこと、地域の避難所の運営状況や、自治会の防災活動の活発さなど、実際に暮らす上での安心材料となる情報もあるかもしれません。
専門知識が豊富なスタッフが、あなたの不安にお答えし、客観的な視点からの住まい選びをサポートします。
どうぞお気軽にお近くのイエステーションにご相談ください。
ハザードマップを「安心な未来へのコンパス」に
ハザードマップは、決して住まい探しを邪魔するものでも、不安を煽るためだけのものでもありません。
それは、私たちがこれから暮らす場所のリスクを正しく理解し、賢く備えるための「未来へのコンパス」です。
色が付いていることに一喜一憂するのではなく、その色が示す意味を理解し、どのような対策が取れるのかを考える。
その視点を持つことで、ハザードマップはあなたの心強い味方になります。
この記事で得た知識を活用し、あなたとご家族にとって、安全で幸せな暮らしが実現できる住まいを見つけるお手伝いとなれば幸いです。
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